「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
退職希望の従業員と円満な交渉へ:引継ぎを重視した労務トラブル解決策
現状の労務課題
とある従業員数20名の介護施設での事例です。従業員から「社長のことが信用できないため、すぐに退職したい」という申出がありました。施設の就業規則では退職の申出は3か月前と定められていましたが、従業員は「今すぐに辞めたい」という強い意思を示していました。オーナーとしては、施設運営に影響が出ないように、少しでも長く在職してもらい、引継ぎの期間を確保したいため、当事務所にご相談いただきました。
当事務所からのご提案内容
まず就業規則に「3か月前の申出」が記載されていたとしても、民法上は2週間前の申出で退職が可能であるため、3か月前の申出は訓示的な規程であることをオーナーに伝えました。そして、まずは退職希望者の理由や背景をしっかりとヒアリングするよう助言しました。その際、以下の点についての詳細な確認を行うよう提案しました。
– 退職を希望する具体的な理由
– 引継ぎが可能な範囲
– 社長への不信感の詳細と、これまでの経緯
目の前の問題に対処しつつ、従業員の気持ちに寄り添ったアプローチを取ることで、解決策を見つける余地を模索するように提案しました。また、解決策が見つかった場合、引継ぎへの協力(文書化やマニュアル作成、数日間の出社)についても可能性を探るべきだと助言しました。
解決後の結果
社労士事務所からのアドバイスを受け、オーナーは従業員と交渉を進めることができました。その結果、「社長との直接の話をすることがなければ、1か月間は引継ぎ期間として残れる」という合意に至りました。従業員は3か月は残ることが難しいものの、1か月の間、業務の引継ぎに協力してもらえることとなり、施設の運営に大きな支障をきたさずに対応できる見通しとなりました。
本件のポイント
今回の事例のポイントは、以下の通りです。
目の前の問題の解決:まずは、従業員の退職理由や背景をヒアリングし、現状を把握することが重要でした。
専門家への相談:就業規則と民法の違いを踏まえ、法律的なアプローチで現実的な対応を模索しました。
残れる条件を模索:「引継ぎを重視する」という視点で交渉することで、無駄に3か月の在職を強制するのではなく、1か月の引継ぎ期間の確保を実現できました。
このように、専門家のアドバイスを受けながら柔軟に対応し、従業員と企業双方の納得のいく解決策を見出すことができました。