「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
【クリニック就業規則】メンタルヘルスによる従業員の休職の取扱いについて社労士が解説
栃木県を中心に、クリニックの労務管理を支える社会保険労務士法人アミック人事サポートです。今回は、クリニック向けとしてメンタルヘルスに起因する精神疾患になった時の対応について解説します。
毎年6月の梅雨の時期になるにつれ、クリニックから従業員の心身の不調について相談を受ける傾向が高まってきます。6月病という言葉を耳にされた方も多くなってきたのではないでしょうか。
従業員の方が実際にメンタル不調による精神疾患になってしまった際に、クリニックとして知っておきたい必要な対応や注意点をわかりやすく解説していきます。
目次
メンタルヘルスとは?どのようなものがある?
そもそもメンタルヘルスとはどのようなものかご存知でしょうか?
メンタルヘルスとは、こころの健康状態を意味しています。
こころの調子を崩してしまうことで、近年、こころの病気が増えており、生涯を通じて5人に1人がこころの病気にかかるともいわれています。
(参考:厚生労働省HP メンタルヘルスとは)
メンタルヘルスによるこころの病気には、例えば以下のようなものがあります。
(引用元:知ることからはじめよう こころの情報サイト)
メンタルヘルスによる精神疾患の予兆
予兆としては、本人の自覚があるものと、周りの職員からでもわかるものがあります。
2023年6月27日、29日に開催する「職員のメンタルヘルス不調しっかり対策セミナー」の資料から抜粋しますが、以下をご参考にご確認ください。
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従業員に予兆が出たときにクリニック側に求められる対応
それでは、実際に従業員に予兆が出ていた時にどのような対応が必要でしょうか?
クリニックとして以下の3つの対応が求められます。
主治医の診断を受けさせる
主治医の診断は早ければ早いほど良いです。
従業員がメンタルヘルスによる精神疾患かどうかの判断もスムーズにできるようになります。
治療が遅れることによる症状の悪化を防ぐことにも繋がります。
診断を受けることにより、主治医に対して従業員を休職させた方が良いか、その場合の休職期間はどれくらいが良いかという意見を聴くことができます。
クリニックの労務環境に問題がなかったか確認する
メンタルヘルスによる精神疾患は、プライベートが要因で発症することもあれば、クリニックの労務環境に問題があって発症することもあります。
クリニックの労務環境に問題がなかったか確認するポイントとして、以下の内容が挙げられます。
2023年6月27日、29日に開催する「職員のメンタルヘルス不調しっかり対策セミナー」でも解説致しますので、是非ご参加ください。
休職を要するときは休職制度について説明する
まずは休職制度の有無を確認しましょう。休職制度を定めるかどうかは事業主である先生の判断次第です。
休職制度がある場合には、次の項目を説明しましょう。
休職発令
メンタルヘルスに起因する精神疾患の場合は、本人が認めない場合もあります。
その場合でも、メンタルヘルス不調の影響で、欠勤や勤怠不良が続いている可能性がありますので、まずは主治医の診断と診断書の提出を求めましょう。提出された診断書の内容や、主治医の意見も踏まえ、休職を発令するか判断します。
休職期間
休職期間についても、法律上の定めはありませんので、就業規則にどのように記載されているかがポイントになります。
これから休職制度を作る場合には、全員一律の期間設定にするか、勤続年数に応じて設定するか、休職期間がクリニックの規模に適しているのかといった観点でも検討する必要があります。
休職中の取り扱いを就業規則に明記
休職期間中に賃金を支払うか、賃金が無給となる場合には、社会保険料の取り扱いをどのようにするかといった金銭面の記載も必要です。
休職期間が長期にわたる場合は、定期的にクリニックに経過報告をするように求めることも必要な対応です。
休職期間中に不誠実に療養に専念しない職員が出てくる可能性もあるので、休職期間中は療養に専念するよう記載することも考えておく必要があります。
パートや嘱託職員の場合の取り扱い
パートや嘱託職員の場合は、有期雇用かどうかによって基本となる対応が変わります。
同一労働同一賃金ガイドラインでは、病気休職の場合に、「短時間労働者には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない」とされています。
(参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省)
休職制度を構築する際には正職員だけでなく、パートや嘱託といった非正規の職員の取り扱いも踏まえて対応する必要があります。
⇒休職制度の構築、運用に関してお困りごとがありましたら、⇒アミック人事サポートにご相談ください。
休職から復職させる場合の対応は?
休職中の従業員から復帰の意思表示があった場合、まずは主治医による診断書の提出を求めましょう。復職可能と診断されているかを確認することになりますが、あくまで日常生活における病気の回復状況によって判断された内容のため、職務遂行能力まで回復しているとは限らないことに注意しなければなりません。
復職可否の判断
復職可否については、個々の事象に応じて総合的な判断が求められます。職務遂行能力が完全に回復していないことを考慮しながら、受け入れ態勢を整えていくという対応も必要になってきます。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」には、判断基準の例として以下の通り記載されています。
(引用:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省)
配置転換等の労働条件の見直し
クリニックの規模によっては、配置転換を行うほど人員がいない場合も想定されますが、体制がある場合には職務が限定された労働契約の内容になっていない限りは、人事権の行使の一つとして行うことが可能です。
注意点としては、賃金の減額が可能かどうかは就業規則や賃金規程の定め次第となることです。就業規則や賃金規程を策定する際には、配置転換や賃金の変更も考慮して対応する必要があるため、専門家に相談しながら作成することをおすすめします。その上で、労働条件の変更を伴う場合には、改めて適切な内容で労働契約書を取り交わすようにしましょう。
再休職の取り扱い
メンタルヘルスに起因する精神疾患の場合は、復職しても出勤と欠勤を繰り返してしまうことがあります。しばらく出勤した後に再び休職する場合に、リセットして新たな休職として扱うか、休職期間の延長として扱うかはクリニックの就業規則に規定された内容に応じて対応が変わります。クリニックの規模に応じて判断が異なると思いますので、自身のクリニックに適した就業規則になっているか、今一度ご確認ください。
復職できないときは?
就業規則に定めた休職期間を経過した後も復職できないときは、原則としては就業規則に従って退職または解雇という流れになります。
しかし、該当従業員のメンタルヘルスに起因する精神疾患が、クリニック内のハラスメントが原因の場合は不当解雇に該当するような判例もありますし、主治医が復職可能としているにもかかわらず復職を認めない場合に不当解雇と判断した判例もあります。
その時の状況によって適切な判断が求められますので、ご不安な場合は専門家である社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。
まとめ
本記事ではクリニックにおける従業員がメンタルヘルスに起因する精神疾患になった時の対応について解説しました。
休職の取り扱いや復職の条件は就業規則にしっかりと明記されているかがポイントになります。
就業規則や定めるべき内容について難しいと感じた場合は、プロにご相談することをおすすめ致します。
社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、就業規則の休職規定に詳しいプロがご相談に応じます。お気軽にご相談ください。
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