「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
試用期間の延長とは?条件と注意点をわかりやすく解説
栃木県を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人アミック人事サポートです。今回は、試用期間の延長について解説します。
新しく従業員を採用した際に、試用期間を設定する企業は多いと思います。試用期間の満了が近づくにつれ、「延長したい」といったご相談を経営者や人事担当者からいただくことがあります。
試用期間を延長する場合に、経営者や人事担当者が知っておきたい必要な条件や注意点をわかりやすく解説していきます。
目次
試用期間とは?
試用期間とは、企業が本採用する前に採用した人物が自社に適した人材かどうかを確認するための期間です。
正式な配属先を決めるために、適性を判断する期間として活用している企業もあります。
試用期間の目的
試用期間は、採用した人物の能力や人柄を確認することを目的として設定されています。
採用前の筆記試験や面接試験ではわからない部分を判断するため、実際の勤務姿勢を見て本採用するかどうかを決めていきます。
企業の雰囲気や業務内容との相性を確認することができるため、企業側にとっても従業員側にとってもミスマッチをなくすことができるというメリットがあります。
試用期間の長さ
試用期間の長さについては、法律上は定められていません。一般的には3か月から6か月で設定されています。
試用期間は従業員の地位を不安定にさせるため、必要以上に長い期間は好ましくありません。
長くても1年と考えるのが妥当でしょう。
試用期間は延長できる?
法律上、試用期間の延長に関して制限はされていないため、延長することは可能ですが、自由に試用期間を延長しても良いというわけではありません。
試用期間を延長するためのには条件があります。
試用期間を延長するための4つの条件
企業が試用期間を延長するためには、一定の条件をクリアする必要があります。条件を満たしていない場合には、公序良俗に反するものとして試用期間の延長が無効になることがあります。
試用期間を延長するための条件は次の4つです。
就業規則に試用期間の延長について規定されている
試用期間を延長する場合には、就業規則に試用期間の延長について規定されていることが必要です。
延長の可能性だけでなく、延長できるのはどのような場合か、その延長期間は具体的に何か月なのかといったことも記載しておくべき内容です。
就業規則に規定がされていなくても、企業が本採用拒否をできる場合であれば、試用期間の延長を認めた裁判例もありますが、トラブルを避けるためにも就業規則にしっかりと規定することをおすすめします。
⇒就業規則の作成に関してお困りごとがありましたら、社会保険労務士法人アミック人事サポートにご相談ください。
合理的な理由や事情がある
就業規則に規定がされていても、合理的な理由や事情がなければ企業が一方的に試用期間を延長することはできません。
「覚えが悪い」、「ミスが多い」という理由は、試用期間中は当たり前と判断される可能性があり、合理的な理由と認められない場合が多いでしょう。
具体的に合理的な理由として認められるものは以下の通りとされています。
延長の期間に妥当性がある
就業規則に規定していたとしても、無制限に延長できるわけではありません。
社会通念上、妥当な期間に設定することが必要です。
試用期間を3か月から6か月で設定している企業が多いため、延長する場合には当初の期間と合わせて1年以内に設定するとよいでしょう。
対象従業員への事前告知や同意がある
試用期間を延長する場合は、試用期間の満了前に告知をする必要があります。
試用期間が満了すると本採用となるため、満了後に延長を適用することはできません。
採用の段階から試用期間の延長になる可能性についても説明し、同意を得ておきましょう。
試用期間の延長が認められる5つの例
試用期間の延長が認められる、次の5つの例を解説します。
職務遂行能力が著しく低い
特定の業務を行うために中途採用をしたが、職務遂行能力が著しく低くて期待していた業務ができず、もう少し様子を見たいような場合には、試用期間の延長が認められるでしょう。
従業員の今後の活躍も踏まえて、もう少し様子を見ながら最適な配属を探す場合も、試用期間の延長が認められやすいでしょう。
勤怠不良を繰り返す
新卒採用の場合は、学生気分が抜けずに頻繁に遅刻をする従業員がいたりします。
適切な指導を行ったうえで、本人が反省し業務に取り組めるようであれば、試用期間を延長して反省や改善を確認する必要が出てくるでしょう。
指導の際には遅刻や欠勤の日数を管理したものを提示できるようにしておきましょう。
法律違反があった
勤務時間外の軽微な法律違反で、企業への信頼などに何ら影響の無い場合には試用期間の延長をすることはできません。
傷害事件や飲酒運転による事故といった本採用を拒否するような法律違反ではない場合に、試用期間を延長して法律違反が繰り返されていないか確認することが考えられます。
この場合に再び法律違反をすることがなければ本採用するという流れも考えられます。
経歴詐称をしていた
経歴詐称はそもそも懲戒事由に該当するため、解雇という場合も想定されます。
試用期間中に発覚した際は、本人から事情を聞きいたうえで業務に直接的な影響がないかを判断し、影響がないようであれば、改めてその人となりを確認するために試用期間を延長することがあります。
勤務態度が悪く、他の従業員との協調性が無い
上司の指示に従わない場合や他の従業員との協調性が無いような場合は、企業としての業務効率が低下し、業績に悪影響を及ぼすことも考えられるため、本採用が厳しくなりますが、本人の反省や改善が見られれば、試用期間を延長して本採用するか確認していくことは有効な方法と言えます。
試用期間の延長をする場合の注意点
試用期間を延長することは法律違反ではありませんが、適切な方法で行わなければトラブルに発展してしまうがあります。
ここでは、試用期間の延長をする場合の注意点として以下の2点を解説します。
対象従業員への丁寧な説明
採用時にあらかじめ試用期間の延長について説明をしていたとしても、延長する際には改めて丁寧に説明しましょう。
試用期間の延長はネガティブなイメージを持たれがちなため、延長の理由をしっかりと伝えることも重要です。
従業員のモチベーションが低下しないように配慮しつつ、改善の機会としても活用していきましょう。
延長理由を明確に示す
試用期間を延長する場合は理由を明確に示す必要があります。
遅刻や欠勤時の出勤簿やタイムカード、適切な指導を行った場合の指導書など、裏付けとなる証拠についても揃えておきましょう。
万が一、従業員が試用期間の延長が不当だと訴えてきたときに、合理的な理由があることを証明できないと裁判で不利になる可能性もあります。
試用期間を延長する場合は、合理的な理由を書面で明示したうえで、従業員から署名捺印をもらうようにしましょう。
⇒出勤簿やタイムカードの確認方法や、労働契約書や指導書といった書類作成に関してお困りごとがありましたら、社会保険労務士法人アミック人事サポートにご相談ください。
まとめ
本記事では試用期間の延長をする場合の対応について解説しました。試用期間の延長は従業員にとって不安定な状態が続くことになるため、簡単に適用させることはできません。内容について難しいと感じた場合は、プロにご相談することをおすすめいたします。
社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、試用期間の運用に詳しいプロがご相談に応じます。お気軽にご相談ください。
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