「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
【クリニック・医院開業支援】開業前に必要な準備とスケジュールについて社労士が解説!
栃木県を中心に企業の労務管理を支える、社会保険労務士法人アミック人事サポートです。
今回はクリニック開業を検討している先生方に向けて、スケジュールや事前準備について解説します。クリニック開業までの流れを順番に解説しますので、参考にしてください。
<医院開業・クリニック開業>開業するには何が必要?開業のスケジュールと準備について解説 後編はこちら
クリニック開業のスケジュール
クリニック開業の際には、どのくらい前から準備を始めるのがベストかご存じですか?
開業の際には余裕をもち、1年半前から準備を進めるのが理想です。本記事では、クリニックの開業スケジュールと準備の流れを解説します。
【18か月前】事業コンセプト・診療方針 策定
クリニック開業の際は最初に、事業コンセプトと診療方針を決定しましょう。
事業コンセプトには、開業動機を反映させます。開業動機を掘り下げることで「地域医療に貢献したい」「身につけた医療技術を活かしたい」などコンセプトが決まります。
診療方針は「どのような患者さんに、どのような診療を提供するのか」を具体化したものです。「内視鏡検査の技術を活かしたい」「高齢者医療を担いたい」など開業動機をさらに深掘りしましょう。
「収入はどのくらい必要か」「どんな生活を送りたいか」も考慮すると、より具体的なコンセプトが見えてきます。
【17か月前~12か月前】事業計画の策定
どのようなクリニックを開業するか決めたら、事業計画を策定します。事業コンセプトや診療方針に基づき「1日の患者数」など具体的な数字を想定して定めましょう。
収支構造や資金繰りなどのキャッシュフローも固めます。事業計画書をもとに資金調達を行うため、しっかりと作り上げてください。
同時に、損益計算書や収支予定表も作成します。クリニックの収支構造を把握するために必要なフローですが、難しい場合は税理士や開業コンサルタントに任せるとスムーズです。
【11か月前~7か月前】土地や物件の選定・資金調達
事業計画を定めたら、土地や物件の選定に進みます。
土地や物件の選定
開業予定地の選定は、1年前には開始します。開業コンセプトに合致する地域を定めたら、診療圏調査を行いましょう。
テナントを希望する場合は、電気容量や水回りも確認します。ビルの窓や屋外に看板を設置できるかの確認も必要です。
資金調達
金融機関と交渉して資金調達を進めます。福祉医療機構や日本政策金融公庫、銀行などに事業計画書を提出して、借入を行いましょう。融資までに2~3か月かかるため、早めの申し込みが必要です。
【6か月前~4か月前】内装設計と工事・医療機器選定
テナントを借りる場合は、内装の設計と工事を行います。クリニック内装工事の実績が豊富な業者に依頼すると安心です。
内装工事の際に動線や広さを確保できるように、導入機器の選定も済ませておきましょう。電子カルテを導入する場合は、医療機器と連携できるものを選定するとスムーズです。
電子カルテと医事会計システムは、連動型や一体型のものが主流となっています。使い勝手を重視して選定しましょう。
【3か月前~1か月前】スタッフ募集と採用・Webサイト作成
3か月前からは、開業後の運営に向けて準備を進めます。
スタッフの募集と採用
開業3か月前には、スタッフの募集や採用を行いましょう。病院勤務で忙しい場合は、先生の代わりに事務局としてコンサルタントに任せて募集や採用業務を行うことも可能ですが、スタッフの人となりを知るために、最低限面接だけでも同席をおすすめします。
採用後は、スタッフの労働保険や社会保険の手続きが必要です。雇用保険関係の手続きでお困りの際は、社会保険労務士法人アミック人事サポートにご相談ください。就業規則や院内ルールの作成も承ります。グループ会社の株式会社アミックビジネスコンサルティングでは開業支援も行っておりますので、お気軽にご連絡ください。
これまで350か所以上の医療機関の労務に携わった豊富な経験と実績をもとに、新規開業する先生をしっかりサポートいたします!
Webサイトの作成
Webサイトは、開業3か月前には完成させます。新しいWebサイトが検索で表示されるまで、3か月以上かかる場合があるためです。
Web検索からも集患できるように、早めに作成しましょう。
昨今はネット予約も利便性が高く、集患に効果があります。Webサイトと併せてネット予約の導入も検討するとよいかもしれません。
開業・内覧会のチラシを配布する場合は、業者にデザインと印刷の依頼を行います。印刷関連の業務は、開業コンサルタントにも相談可能です。
【1か月前~】機器搬入・スタッフ研修・届出・チラシ配布
開業直前で慌ただしくなりますが、着実に準備を進めましょう。
医療機器搬入とスタッフ研修
開業1か月前には、医療機器や什器の搬入を行います。電子カルテの導入も同時に行いましょう。機器のシミュレーションや、スタッフ研修も開始します。
スムーズで好感度の高い医療を患者さんに提供するためには、スタッフの接遇研修が大切です。社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、スタッフ向けの接遇研修も承ります。ぜひご相談ください。
各種届出
開業1か月前には保健所に「診療所開設届」を提出しなくてはなりません。同時に、保険診療を行うために必要な「保険医療機関指定申請」を厚生局に提出します。
手続きが遅れると予定通りに開業できない場合があるため、忘れずに行いましょう。
チラシ配布
開業1か月前には、診療圏内にチラシ配布を行います。新聞折り込みやポスティングで配布しましょう。
開業前に内覧会を行う場合は、日時を記載すると集客が見込めます。内覧会前週の半ば頃、水曜日や木曜日の新聞に折り込みチラシを入れると目にとまりやすく効果的です。一方、週末は折り込みチラシの枚数が多いため、目立ちにくい可能性があります。
事前準備編
ここからは事前準備について深掘りしていきます。
コンセプト
スケジュールの項目でも解説しましたが、クリニック開業において「コンセプト策定」は重要なカギを握ります。コンセプトを明確にすることで、診療方針や資金計画などが決まるためです。
・どのように患者さんを獲得するか
・どのような診療やスキルを提供するか
・どのようなサービスを行うか
上記について考えることで、コンセプトが明確になります。たとえば内科の先生が小児の診療も行えば、かかりつけ医として地域医療に貢献できるでしょう。
立地
コンセプト同様に大切なのが「立地」です。患者さんが多く集まる場所を選ぶことで、経営が軌道に乗りやすくなります。
開業エリア選定の際は、診療方針に沿って選ぶのが重要です。
「自分の専門科目を活かして地域医療に貢献したい」という方針なら、競合が少ないエリアを選びましょう。同じ科のクリニックが開業済みの地域では、競争になります。
エリア内の人口や年齢構成もチェックすべきポイントです。10年後や20年後にも人口が減少しにくい地域を選ぶことで、将来も経営が安定しやすいでしょう。
都市部なら交通の便がよい場所、郊外なら広い駐車場がある場所など、地域の特性によって選ぶ基準は変わります。
また戸建てよりもテナントのほうが、物件を見つけやすい傾向にあります。都市部であれば最初はテナントビルで開業し、ゆくゆくは戸建てを新築する方法もあります。
資金
クリニックを開業するにあたり必要な資金の目安や、調達方法について解説します。
必要な開業資金の目安
開業資金は診療科や地域性、物件のタイプによって、おおよそ5000万円~1億2000万円と幅があります。
都市部のビルテナントに内科のクリニックを開業した場合の内訳は、以下のようになります。
上記は資金内訳の一例です。物件取得費や内装工事費用は、時期や地域によって変動します。
資金調達(融資)の方法
開業資金のうち自己資金を1〜2割とした場合、残りは資金調達することになります。
クリニック開業時の資金調達方法には、以下のような種類があります。
民間金融機関
民間の金融機関に申し込む場合は、メガバンクの前に地元信用金庫や地方銀行の融資制度を確認しましょう。クリニック向けの開業支援ローンを扱っている場合があります。
また、行政や中小企業支援機関と連携して、事業者向けのサポートを行う信用金庫や地方銀行もあります。
地元密着型の金融機関と関係を築くことで、地域での信頼度アップにもつながります。地元金融機関はメガバンクよりも金利が低い傾向があり、融資審査も通りやすい点がメリットです。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、創業や中小企業の経営の支援を行います。融資制度は何種類かありますが、クリニック開業に利用できるのは以下の3つです。
新たに事業を始める方、事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。
融資限度額は7,200万円ですが、そのうち運転資金として利用できるのは4,800万円までになります。設備資金は20年以内、運転資金は7年以内に返済が必要です。
新たに事業を始める方または事業開始後7年以内で、以下に当てはまる方が対象です。
・女性の方
・35歳未満の方
・55歳以上の方
融資限度額や返済期間は、新規開業資金と同様です。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象です。
融資限度額は3,000万円で、そのうち運転資金として使用できる額は1,500万円になります。
・新たに事業を始める際の資金
・事業開始後に必要な設備資金、運転資金
として利用できます。原則、無担保無保証人の融資です。
独立行政法人福祉医療機構
福祉医療機構の医療貸付事業は、病院や診療所対象の融資です。建築資金や機械購入資金として利用できます。
融資の対象や資金の種類によって、限度額に差があります。福祉医療機構か、機構の代理店(金融機関)への申し込みが必要です。
医師信用組合
都道府県によっては医師信用組合があり、医師信用組合は、各都道府県の医師会に所属している医師が利用可能で、一般の金融機関と同様に金融サービス事業を行っています。
クリニック開業の際に利用できるのは「新規開業ローン」です。限度額は都道府県ごとに違い、神奈川県医師信用組合の場合は無担保で8,000万円となっています。また山形県医師信用組合の場合は「開業・継承ローン」の限度額が2億円です。
医師信用組合の融資は、民間の金融機関よりも審査が早い点がメリットです。
税理士・社労士の選定
クリニック開業前後には、税理士や社労士のサポートがあると安心です。信頼できる税理士や社労士に依頼しましょう。
税理士の選定
クリニック開業後には、税務や資金政策などお金に関する業務が増えます。先を見越して、開業後も引き続きお金の管理を任せられる税理士に依頼しましょう。
税理士に依頼できるサポート内容は以下の通りです。
・税務会計
・税務申告
・資産税対策
・経営コンサルティング
・記帳代行
医療機関の税務経験がある税理士に依頼することで、さまざまなアドバイスがもらえます。社労士との連携がスムーズな税理士であれば、利便性も期待できるでしょう。
社労士の選定
社会保険労務士は、各種手続きや届出をサポートします。開業3か月前には依頼を済ませておきましょう。早めの依頼で、開業前後の手続きがスムーズに進みます。
・スタッフの労働契約書を作成
・労災、雇用保険加入届出
・労働保険関係の届出
・36協定届出
・社会保険加入届出
上記の届出だけでなく、スタッフ数10名未満でも就業規則を作成し、きちんと周知しておくと何か起こった時も安心です。
社会保険労務士法人アミック人事サポートでは各種手続きのほか、就業規則の作成や働き方コンサルティング、オリエンテーションも対応いたします。
グループ何には税理士法人アミック&パートナーズや開業支援を行っている株式会社アミックビジネスコンサルティングもございます。グループで開業前から開業後までトータルサポートを行いますので、些細なことでもどうぞご相談ください。
その他注意点(設計・機器・HP)
クリニックの設計や機器選び、Webサイトの準備について解説します。
設計や内装の法令基準
クリニックの建築や改修をする際に守らなければならない法規制は、以下の通りです。
・建築基準法
・医療法
・消防法
・バリアフリー法
・都市計画法
・都市条例(まちづくり条例)
医療法とは、病院や診療所など、医療施設の根幹に関わる法規について定めている法律です。以下のような規定があります。
・診療室の広さは9.9平米以上
・診療室と処置室を兼ねる場合はカーテンなどで区画することが望ましい
・医師1人に対して1室が望ましい
・待合室の広さは3.3平米以上
医療法の基準と建築基準法の基準が異なる場合は、建物としての安全を優先するために建築基準法を優先します。
医療機器選定
医療機器の選定は、行う医療内容を考慮して決めます。開業当初はすべて揃えず、患者数増加に合わせて揃えていくのも、ひとつの方法です。ただし必要不可欠な機器は、揃える必要があります。
医療機器は、業者と秘密保持契約を交わしてから選定を進めましょう。機器や什器備品の選定は、開業コンサルタントに相談する方法もあります。
内装設計の段階で機器選択をすると、コンセント位置や配線、水回りの調整も同時に行えて合理的です。
Webサイト
インターネットが普及し、クリニック選びにもWeb検索を利用する患者さんが増えました。
厚生労働省が行った令和2年の受療行動調査によると、医療機関選びの際にインターネットの情報を参考にする方が多い傾向にあります。10~30代の場合は40%以上の方が参考にしており、40代でも30%以上の方がクリニック選びの参考にしているようです。
この結果からも、Webサイトの設置は集患につながるといえるでしょう。クリニックの情報を事前に入手することで心理的に安心でき、受診へのハードルが下がるためだと考えられます。
Webサイトの作成は、医療系に強く、薬機法や医療広告ガイドラインを熟知している会社に依頼するのがおすすめです。医療系Webサイトの制作実績が豊富で、SEO検索にも強い業者に依頼すると効果的でしょう。
クリニック開業前編まとめ
クリニック開業までのスケジュールと事前準備について解説しました。クリニック開業においては、入念な準備が成功につながります。
開業時の手続きや各種保険の届出、人事労務に関することでお困りの際はぜひご相談ください。社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、クリニック開業に強い専門家が対応し、しっかりとサポートいたします。
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<医院開業・クリニック開業>開業するには何が必要?開業のスケジュールと準備について解説 後編はこちら