「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
大丈夫?割増賃金の計算方法
知らないうちに発生している未払い賃金
労働基準法第144条では、未払い賃金についての規定があります。(裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第9項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。)
「いやいや、うちはちゃんと払ってるから。」という会社でも、実は労働時間の管理が正確にされていない、残業ではないと認識していた時間が労働時間だった、割増賃金の算出計算方法が間違っていた等知らず知らずのうちに未払い残業代が発生しているという事例が多くあります。
今回は、割増賃金の計算方法について説明していきましょう。
理解しよう、割増賃金の計算方法
使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割 増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第37条第1項・第 4項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)
割増率は以下の通りとなります。
※(注1) 中小企業については当分の間、適用が猶予されます。
深夜に時間外労働をした場合は、2割5分+2割5分=5割、つまり通常の賃金の1.5倍となります。また、割増賃金の計算方法は以下の通りとなります。
1時間あたりの賃金額×時間外労働などの労働時間数✕割増率
この1時間あたりの賃金額とは以下の通りとなります。
1. |
時間によって定められた賃金については、その金額 |
2. |
月によって定められた賃金については、その金額を月の所定労働時間数(※)で割り算した金額 |
3. |
日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数で割り算した金額 |
4. |
出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、一の賃金計算期間における当該賃金の総額を、その賃金算定期間における総労働時間数で割り算した金額 |
5. |
月額賃金と日額賃金を受ける場合などはそれぞれを合計した金額 |
1.の時給や3.の日給のみの場合は分かりやすいのですが、知らないうちに未払い賃金が発生しやすいのは2.の月給の場合です。月給における1時間あたりの賃金の算出方法は以下の通りとなります。
月給÷1年間における1か月平均所定労働時間
また、労働基準法施行規則21条では、割増賃金の時間単価を計算するときの基礎賃金から、除外することができる手当について規定されています。
- 1.家族手当
- 2.通勤手当
- 3.別居手当
- 4.子女教育手当
- 5.住宅手当
- 6.臨時に支払われた賃金
- 7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
ただし通勤手当や家族手当等距離や対象者に関わらず一律で支給されている場合は、除外することが出来ません。この辺りも、あまり理解されてないことが多い事例となります。
参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」
1年間における1か月平均所定労働時間て?
では、1時間あたりの賃金を算出する際の「1か月平均所定労働時間」とは、どのように求めるのでしょうか?
「昔からこの数字を使用している」「給与システムを入れる時に、他の会社を参考になんとなく決めている」等、曖昧な数字を使用している例がみられます。1年間における1か月平均所定労働時間の算出方法は以下の通りとなります。
1か月平均所定労働時間数= 1年間の所定出勤日数×1日の所定労働時間÷12箇月
年間の出勤日数は毎年変わるので、年に1回その年の1か月平均所定労働時間数を算出するのが最も正確となります。毎年計算して管理することを負担に感じられる場合でも、1度正確に算出し今後の時間を決めていくのが望ましいでしょう。
割増賃金の計算方法を理解し安心の労務管理を
労務管理の中でも賃金に関わることは、特に慎重に取り組みたいところです。職員の安心および会社の信頼を高めるためにも、割増賃金の計算方法を正確に理解しましょう。
社会保険労務士法人アミック人事サポートは、栃木・宇都宮を中心に東京、埼玉、千葉などの企業様に人事労務に関するご支援をしています。本コラムをご覧になり、人事労務に関する相談をご希望の場合はお問い合わせからご連絡ください。