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【クリニック就業規則】退職者や退職予定者にも賞与の支払いは必要?社労士が解説

2023.05.29 コラム
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栃木県を中心に、クリニックの労務管理を支える社会保険労務士法人アミック人事サポートです。今回は、退職者や休業者がいる場合の賞与の支払いについて解説します。

 

毎年夏と冬に業績に応じて賞与を支給しているクリニックは多いと思います。支給日が近づくにつれ、「この人も支給対象になるの?」といったご相談を院長先生や人事担当者からいただくことがあります。

 

賞与を支払うタイミングで、院長先生や人事担当者が知っておきたい必要な条件や注意点をわかりやすく解説していきます。

 

賞与とは?

そもそも賞与とはどのようなものかご存知でしょうか?

行政通達によると、賞与とは「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないもの」と定義されています。(昭22.9.13 発基17号)

賞与は支給の有無や増減額を含めて、クリニックで判断して設定するものといえます。

賞与は必ず支払わなければいけないのか

賞与の支払いについては、就業規則や雇用契約書にどのように定められているかによって取り扱いが決まります。

就業規則や雇用契約書に定めていない場合は、支払い義務はありません。

就業規則や雇用契約書に定めている場合は、規定通りに対応する義務があります。

現在使用している就業規則や雇用契約書が、クリニックが意図した内容となっているか、今一度ご確認ください。

 

賞与の額をどうやって決定するか

賞与額を決める際に、人事評価制度を策定している一定程度の規模があれば、人事評価制度に則した評価に応じて支払うことが多いですが、規模の小さいクリニックの場合は院長先生の一任で決めることも少なくありません。

 

一つの目安として、「基本給×支給月数×評価による係数」で算出する方法もあります。

純粋に基本給のみを対象とするか、役職手当なども含めて算出するかはクリニックごとに判断していくことになります。

 

支給月数や評価による係数の設定方法もクリニックに判断が委ねられています。

「基本給×2か月」といったように明記されている就業規則を見かけることがありますが、この場合は基本給×2か月の支払いを約束したものになってしまうため、クリニックの意図に反していないか注意が必要です。

評価による係数を設定るする場合は、係数によって支給額を調整することができますが、特定の職員に対して低い評価をした場合に、評価に対して納得が得られず、異議を唱えられる場合があります。その際にはクリニックがきちんと評価理由を説明しつつ、その基準がブレないことがポイントです。不当な評価とならないよう、賞与の評価を下す際には、その基準となる材料を整えたうえで、しっかりと説明することが重要といえるでしょう。

 

就業規則で賞与の規定を確認する

お金の写真

賞与の有無や賞与の額などの支給方法は、就業規則や労働契約書に規定されています。

現に在籍している職員についてだけでなく、退職者についても定めることが可能ですし、在籍はしているが休業している場合についても定めることが可能です。

 

就業規則の作成に関してお困りごとがありましたら、社会保険労務士法人アミック人事サポートにご相談ください。

クリニックが賞与を支給しなくてもよいとされる場合は?

就業規則や雇用契約書に賞与の支給無しと記載されている場合は、そもそも賞与を支給する必要はありません。

就業規則や雇用契約書に賞与の支給有りとされている場合でも、支給しなくてもよいとされる場合があります。

具体的にどのような場合か、ここから解説していきます。

 

退職後の賞与の支払いは必要?

退職後の賞与の支払いについては、退職の事由によって判断が分かれます。

自己都合による退職の場合は、就業規則にどのように定められているかによって異なります。

賞与は必ず払わなければならないものではなく、クリニックが定めた就業規則に沿って支給の有無や金額が決まります。

例えば、「賞与支給日時点で在籍している職員に支払う」という規定がされている場合は、支給日に在籍している職員が賞与の支給対象となるため、支給日に在籍していない(退職している)職員へは賞与の支払いはされないとうことになります。

 

退職の事由が自己都合ではなく整理解雇であった場合は、辞める理由が何か悪いことをしたわけではなく、クリニックの都合で辞めさせることになります。この場合は支給日に在籍することを賞与支払いの条件にしていたとしても、賞与を支払う必要があります。ただし、満額支給しなければならないわけではなく、賞与の算定期間中に在籍していた期間に応じて支給するという考え方になります。

 

退職予定者に賞与を減額することはできる?

賞与は必ず払わなければいけないものではなく、クリニックが定めた就業規則に沿った対応が求められます。

クリニックの業績に応じた設定や、職員の勤務成績や出勤状況に応じて設定することが可能なため、業績や出勤状況が悪ければ賞与を減額するといった設定も可能です。

ただし、就業規則で基本給の2か月分を支給するような規定となっている場合にはその内容で支給しなければなりません。

賞与を減額する場合には、就業規則の根拠となる該当条文を示すことや、その理由を明確に説明することができる必要があります。

 

 就業規則に明記することで賞与の減額が可能

退職予定者の賞与を減額する場合は、就業規則に根拠を明記する必要があります。

記載がない場合は就業規則の減額を行うことはできません。

明確に根拠がなく説明もできないようであれば、院長先生の個人的な好き嫌いで減額されたとみなされて、賠償請求される場合もあるようです。仮に医院の業績によって賞与を減額するような場合があれば、一人だけ減額するのではなく、他の従業員も減額対象とならなければ説明ができなくなってしまうため、注意が必要です。

また、労働基準法附則第136条により、年次有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなくてはならないと規定されています。したがって、年次有給休暇をたくさん取得したからという理由で減額することはできません。

 減額可能な賞与額の幅とは

退職予定者の賞与を減額する場合の内容を就業規則に明記したときに、いったいどれくらいの額を対象とできるでしょうか?

参考になる判例としてベネッセコーポレーション事件(東京地判平8.6.28)があります。簡単にまとめると以下のとおりです。

ベネッセコーポレーション事件のまとめ

 

 

 

これによって、将来への期待分としては2割、賃金の後払い分としては8割とされました。

賞与を減額する場合の幅としては2割までで検討することが妥当です。

ただし、前提として就業規則の賞与の算定基準箇所に、将来への期待が含まれていることが条件となりますので、注意が必要です。

賞与を減額する場合の注意点

退職予定者の賞与を減額する場合の注意点をまとめます。

賞与を減額するときの注意点

 

 

 

 

育休中の賞与の取り扱いは?

育休のイラスト

退職予定者ではないですが、例えば育休中の場合の賞与はどのようになるでしょうか?

就業規則には通常、賞与の算定期間が規定されています。算定期間の全てが育休中であったか、算定期間の一部が育休中かで判断が異なります。算定期間の全てが育休中の場合は、賞与を支給しないとすることもそれなりに合理的な方法とされますが、算定期間中に1日でも勤務した場合は勤務日数に応じた賞与支給が必要です。

つまり、勤務していない育休期間に相当する賞与分を減額することは、認められているといえます。

育児・介護休業法第10条では育休をしたことを理由として不利益な取扱いをすることを禁止しているため、実際に育休を取得した期間を超えて減額することはできません。

妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取り扱いに関するQ&A

引用元:(参考)妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取り扱いに関するQ&A|厚生労働省

休職者の賞与の取り扱いは?

休業と似た内容で私傷病による休職がありますが、賞与の取り扱いに違いはあるのでしょうか?

結論から言えば、就業規則によります。

休職制度自体も法律上で定められたものではないため、休職制度を設けるかどうか、設けた場合の内容をどうするかはクリニックごとに決めることができます。したがって、休職期間中の賞与の取り扱いについても、クリニックの就業規則に定められた内容によって変わります。

仮に、就業規則上に賞与を支給することが明確にされている場合は、その内容に応じた支給義務が発生します。しかし、就業規則に賞与の支給が明記されていても、賞与の額の算定にあたっては、仕事の成績に応じて支払うとする内容が一般的です。休職期間中は仕事の成果を上げることができないので、算定期間のほとんどを休職したような場合は、結果的に支給対象にならない場合もあります。

クリニックの就業規則が院長先生の意図した内容となっているか、今一度ご確認ください。

 

就業規則の休職や賞与の規定に関してお困りごとがありましたら、社会保険労務士法人アミック人事サポートにご相談ください。

 

常勤とパートで差を付けられるか?

クリニックでは、賞与は常勤の正職員のみが対象となり、パートなどの非正規職員は対象にならないとされている場合があります。そもそも冒頭でもお伝えした通り、賞与はクリニック独自で判断して設定するものですが、パートタイム・有期雇用労働法の中で不合理な待遇差をつけることが禁止されているため、賞与においても正職員とパートで差を付けることが不合理か否かがポイントになります。

不合理の有無を確認するためには、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインを活用ください。

「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要には賞与に関して以下のとおり記載がされています。

同一労働同一賃金ガイドライン」の概要(賞与)

 

 

 

 

引用元:厚生労働省「同一労働同一賃金のガイドライン」の概要②

ここに記載の賞与の場合は、「パートについてはクリニックの業績への貢献度がわからないから支給しない」という対応はできないという結論になります。

 

仮に待遇差があった場合に、職員から説明を求められたときは、院長先生は説明義務を果たす必要があります。

同一労働同一賃金の観点から、不合理な待遇差となっていないか、差がある場合には明確に説明することができるか、今一度確認することをおすすめします。

 

同一労働同一賃金への対応に関してお困りごとがありましたら、社会保険労務士法人アミック人事サポートにご相談ください。

 

 

まとめ

貯金箱の写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事ではクリニックにおける退職時や休業時の賞与について解説しました。賞与の支給対象や取り扱いは就業規則にしっかりと明記されているかがポイントになります。就業規則や定めるべき内容について難しいと感じた場合は、プロにご相談することをおすすめいたします。

社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、就業規則の賞与規定に詳しいプロがご相談に応じます。お気軽にご相談ください。

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