「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
職員のメンタルヘルス不調、予防と対策方法について社労士が解説
栃木県を中心に企業の労務管理を支える、社会保険労務士法人アミック人事サポートです。今回は、職員のメンタルヘルス不調の予防と対策方法について社労士が解説します。
企業内のメンタルヘルス対策で重要な「4つのケア」と「4ステップ予防法」を中心に解説しますので、参考にしてください。
メンタルヘルスとは?
メンタルヘルスとは「心の健康」という意味の言葉です。昨今、仕事上の悩みやストレスが原因で心の健康障害を訴える方が増えています。
厚生労働省が調査した政府統計「令和2年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」によると、仕事に対して強い不安やストレスを感じている労働者の割合は54.2%です。働いている人の過半数以上が、仕事に対して不安やストレスを抱えていることになります。
また過去1年間にメンタルヘルスの不調により、連続で1か月以上休業した労働者がいる事業所の割合は9.2%にのぼります。同じく過去1年間に、メンタルヘルスの不調で退職した労働者がいる事業所の割合は3.7%です。
仕事上でのストレスによるメンタルヘルス不調者が多い現状を改善するために、厚生労働省が定めたのが「労働者の心の健康の保持増進のための指針」です。この指針に基づいて、企業は「心の健康づくり計画」を行わなくてはなりません。
企業においてメンタルヘルス対策が必要な理由とは
企業において、職員のメンタルヘルス不調の対策が必要な理由を解説します。
メンタルヘルス不調での休職や離職防止
前述した通り、近年メンタルヘルスの不調によって休職や離職をした労働者の割合は少なくありません。
メンタルヘルスの不調による休職者や離職者が増えると、労働力不足につながり社内のモチベーションや生産性が低下してしまうかもしれません。
人員不足によって厳しい労働環境になるため、新たなメンタルヘルス不調者が発生する悪循環につながりかねません。
そのため、メンタルヘルス不調が原因の休職者や離職者を発生させない対策が必要なのです。
働き方改革の一環として
2019年4月より施行された働き方改革は、2020年4月より中小企業でも本格施行されています。働き方改革によって「時間外労働の上限規制」や「月60時間超の残業割増率の引き上げ」などの規定ができました。
従業員にとって働きやすい労働環境を整えるために、メンタルヘルス対策への取り組みが重要な課題となります。
企業の健康経営のため
健康経営とは「従業員の健康を保ちながら増進する取り組みによって、将来的に企業の収益などを高める」方法です。従業員の健康を増進し活力を向上させることによって、企業の業績を向上させ価値を高めます。
健康経営の詳細については、経済産業省のホームページをご覧ください。
企業がメンタルヘルス対策で得られるメリットとは
従業員のメンタルヘルス不調を防ぐ対策を施すことで、企業が得られる利点は以下の通りです。
職場の生産性低下を防止できる
メンタルヘルスの不調におちいると、脳の機能が低下します。集中力や判断力が低下し、仕事のパフォーマンスにも影響するでしょう。
判断力不足で業務の質が落ち、職場の生産性低下につながる恐れがあります。遅刻や欠勤が増え、職場全体のモチベーションが低下する原因になりかねません。
リスクマネジメントができる
メンタルヘルスの不調によって業務の質が落ちた場合は、多方面に迷惑がかかります。クレームにつながりやすいため、企業の評判が低下する原因となるでしょう。企業にとって大きな損失になります。
また従業員のメンタルヘルス不調が仕事上のストレスで生じた場合、企業は安全配慮義務違反によって損害賠償責任を負う可能性があります。訴えられれば、大きなリスクとなってしまうでしょう。
メンタルヘルスの不調から、ハラスメント問題に発展する可能性もあります。ストレスを抱えている従業員が、ほかの従業員に対してハラスメント行為を行う可能性があるためです。
メンタルヘルス対策を行うことで、これらのリスクを回避できるため、早めの取り組みが重要です。
職場環境の改善ができる
メンタルヘルス対策を行うことで企業の組織力が向上し、働きやすい職場環境に改善できます。
職場環境の良さは、企業の採用力アップにつながります。働きやすい企業というイメージが定着するためです。
魅力的な人材の採用は業績アップに直結するため、メンタルヘルス対策は企業にとって有効な施策となるでしょう。
メンタルヘルス対策の基本
企業においてメンタルヘルス対策をする際には、段階を踏んで正しく行う必要があります。メンタルヘルス対策の基本的な方法を解説します。
メンタルヘルス対策「4つのステップ」
メンタルヘルス対策を行う際には、段階的に4つのステップをふんで進みます。それぞれのフェーズで抑えるべき「実施ポイント」は以下の通りです。
【0次予防】メンタルヘルス対応力診断で職場環境をチェック
メンタルヘルス対策の0次予防では、メンタルヘルス対応力診断やコーチングを受けてメンタル不調者を出さない職場環境作りを行いましょう。
従業員にメンタルヘルス問題が生じた際の対応状況について「メンタルヘルス対応力診断」で万が一の場合にも困らない企業を目指します。
働きやすい環境を整えて、従業員が定着する企業を作るためにも「メンタルヘルス対応力診断」の活用をおすすめいたします。
【一次予防】メンタルヘルス不調を未然に防ぐ
一次予防は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために「ストレスチェック」を行うフェーズです。労働者が50人以上の企業では、毎年1回ストレスチェックを行うことが義務づけられています。
またストレスマネジメント研修を行い、メンタルヘルス不調の対策について学ぶ機会を作りましょう。
この段階で早めに問題点を把握し、企業内でメンタルヘルスに対する意識を向上させるのが大切です。
【二次予防】早期発見し重症化を予防する
二次予防は、メンタルヘルス不調に悩んでいる従業員を早期発見し、重症化を防ぐフェーズです。
「相談窓口を設置する」「産業医や外部の専門機関につなぐ」などの対策を行い、メンタル不調を重症化させないようにしましょう。
弊社では外部相談窓口として「ハラスメント外部相談窓口の設置」を行っております。お気軽にご相談ください。
【三次予防】メンタルヘルス不調者の職場復帰を支援
三次予防は、メンタルヘルスの不調で休業した従業員の職場復帰を支援するフェーズです。職場復帰支援のプログラムを策定し、メンタルヘルスの不調が再発しないようにサポートを行います。
復帰時には部署の異動(人事異動)や労働条件の改善も検討し、フォローを行いましょう。離職につながらないように、企業内でしっかりとフローを設定しておくことが重要です。
社会労務士法人アミック人事サポートでは「メンタルヘルス対応力診断」や「外部相談窓口」などのサポートが可能です。お気軽にご相談ください。
メンタルヘルス対策「4つのケア」
メンタルヘルス対策を行う場合は、厚生労働省の指針で示されている「4つのケア」を取り入れましょう。
引用元: 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
①セルフケア(労働者個人)
従業員自身が、自ら感じているストレスに気づいて対処することを「セルフケア」といいます。メンタル不調に対する知識や、解決方法を身につけるよう努めることが大切です。
②ラインによるケア(管理監督者)
職場の管理監督者が、従業員のストレス要因を把握し環境改善を図ることを「ラインによるケア」といいます。
部下がメンタルヘルスの不調に悩まされていないかを観察し、気にかけることが大切です。必要に応じて、相談対応や情報提供を行いましょう。
③事業場内の産業保険スタッフによるケア
産業医や衛生管理者、保健師など事業場内の専門スタッフによるケアです。ラインによるケアが効果的に行われるよう、企画立案を行います。
事業場外資源とのネットワーク構築や、従業員と現場監督者のサポートも行います。
④事業場外資源によるケア(外部EAP)
「事業場外資源によるケア」とは、外部の医療機関や専門家によるメンタルヘルスサービスを指します。
メンタルヘルスケアを外部に委託する形になるため、従業員が社内での相談を望まない場合に有効です。外部スタッフが対応するため、従業員が気兼ねなく相談できます。
企業がメンタルヘルス対策として実施すること
企業がメンタルヘルス対策として行うべき施策を、具体的に解説します。具体的な取り組みの内容と進め方は以下の通りです。
ストレスチェック制度の実施
2015年12月に労働安全衛生法の改正により、労働者が50人以上いる事業所では毎年1回の「ストレスチェック」が義務づけられました。
質問票に記入して、ストレスの状態を調べる検査です。ストレスチェックの結果「医師による面接指導」が必要な場合は、直接本人に通知されます。
ストレスチェックを取り入れる場合は参考として、厚生労働省のストレスチェック制度の導入マニュアルをご覧ください。
産業医の協力を仰ぐ
労働安全衛生法第13条により「常時雇用する労働者数が50人以上の事業場は、1人以上の専属産業医もしくは嘱託産業医を専任すること」を義務づけられています。
産業医に支援を仰ぐことで健康診断やストレスチェックに基づいたケアや、従業員へのアドバイス・治療などの支援が期待できるでしょう。
衛生委員会の設置
労働安全衛生法に基づき、常時使用する従業員が50人以上の事業場では衛生委員会の設置が義務付けられています。
メンタルヘルス対策を行うには、衛生委員会が中心となって「心の健康づくり計画」を策定する必要があります。心の健康づくり計画に盛り込む事項は、厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持推進のための指針」を参考にしてください。
社内環境の把握・改善
メンタルヘルス不調には、職場内の労働環境や人間関係も関係します。昨今はパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどが原因で、メンタルヘルスの不調におちいる場合も多いようです。
職場内の設備環境の点検を行うとともに、仕事量や人間関係などについて把握し改善することでメンタルヘルス対策に結びつけましょう。
メンタルヘルス対策の教育研修・情報提供
企業内でメンタルヘルス対策への意識を高めるためには、教育研修を行うのが効果的です。職場のメンタルヘルス研修ツールとしては、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」が参考になります。
さらに一歩踏み込んだ教育研修や、管理者向けの研修を行う場合は、外部講師への委託も検討しましょう。
就業規則の整備・見直し
もし従業員がメンタルヘルス不調で休職をすることになった場合は、就業規則の規定に従って対応します。
就業規則に、休職に関する規定が盛り込まれているか再度確認しておきましょう。就業規則には、休職できる期間や条件などを明確に記す必要があります。
休職後の職員に適切な復職支援をするためにも、就業規則の整備と見直しが大切です。
相談窓口の設置
従業員がメンタルヘルスの不調について相談できる窓口を設置し、メンタルヘルス対策につなげます。社内に相談窓口を設けるほか、外部相談窓口の利用もメンタルヘルス対策に有効です。
社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、外部相談窓口のサービスを行うほか、メンタルヘルス対応力診断、就業規則の整備見直しについてもお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性と効果的な方法について解説しました。
従業員のメンタルヘルス不調は生産性の低下につながるため、企業にとって大きな損失となります。そのため、今回お伝えした「4つのケアとステップ」を取り入れて予防していかなくてはなりません。
メンタルヘルス対策のためには「メンタルヘルス対応力診断」や「外部相談窓口」を活用して、未然に取り組むことが重要です。
メンタルヘルス対策について、少しでも難しいと感じられた場合は専門家へ相談することをおすすめいたします。社会保険労務士法人アミック人事サポートでは、メンタルヘルス対策に強い専門家が対応させていただきます。
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