「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
職員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合、会社の対応は?~Part2~
職員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合
前回のコラムにて、健康保険等に関する取扱いをご説明いたしました。新型コロナウイルス感染症に感染し、その療養のため労務に服することができない方については、被用者保険に加入されている方であれば傷病手当金が支給されます。また、労務に服することが出来なかった期間には、発熱などの症状があるため自宅療養を行った期間も含まれます。同様に、やむを得ず医療機関を受診できず、医師の意見書がない場合においても、事業主の証明書により、保険者において労務不能と認められる場合があります。
従業員が新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者となった場合
それでは、従業員が濃厚接触者となった場合の企業が取る対応はどのようになるのでしょうか?
濃厚接触者とは、陽性となった人と一定の期間に接触があった人をいいます。 ここでいう一定の期間は、症状のある人では症状出現から2日前、症状のない人では検体採取時から2日前の期間です。
この期間に、以下の条件に当てはまる人を濃厚接触者といいます。
□陽性者と同居している人
□陽性者と長時間接触した人(車内、航空機内などを含む。機内は国際線では陽性者の前後2列以内の列に搭乗していた人、国内線では周囲2m以内に搭乗していた人が原則)
□適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた人 □陽性者の気道分泌液や体液などの汚染物質に直接触れた可能性が高い人
□マスクなしで陽性者と1m以内で15分以上接触があった人 ただし、これはあくまで原則であり、あらゆる状況を聞き取ったうえで保健所が総合的に判断します。
(参考)厚生労働省 新型コロナウイルス最前線 広報誌『厚生労働』2021年9月号https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202109_00005.html
待機期間に関しては、政府は1月28日に現在の10日間から7日間に短縮することやエッセンシャルワーカーに対する取扱い等に言及しています。このように随時改定されていますので、ニュースや厚生労働省のHPで最新の情報をチェックしておくことをお勧めいたします。
新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者は、出勤停止か?
都道府県知事(保健所)は、出勤停止とは言わず「休むことを強く要請する」という表現にとどまります。その場合会社としては「保健所の指示に従ってください」ということになるでしょう。対応としては、以下の通りとなります。
① 従業員が無症状である場合
テレワークが可能な場合はテレワークとし、通常の賃金を支給します
➁ テレワークが出来ない場合
会社が休業を指示したということになるので、休業手当の支給が必要となります。
➂ 従業員に発熱等症状があり感染の疑いがある場合
傷病手当金の対象になります。
前回のコラムをご参照ください
また、濃厚接触者ではないけれども感染の疑いがある、社内で感染者が出て他の社員が濃厚接触者および感染の疑いがある場合も同じ扱いとなります。なお、業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
(参考)厚生労働省リーフレット「職場で新型コロナウイルスに感染した方へ」
いずれの場合も従業員が年次有給休暇を取得したいと言った場合はそれを優先させてかまいませんので、十分な説明の上対応を進めていきましょう。
新型コロナウイルス感染症で休業とさせた日の取り扱いは?
では、休業させた日はどのような扱いになるのでしょうか?年次有給休暇や賞与の算定において出勤率を求める場合、「出勤」なのか「欠勤」なのか迷うところです。厚生労働省労働基準局長通知(基発0710第3号)「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱いについて」以下のように定められています。
年次有給休暇の請求権の発生について、法第三十九条が全労働日の八割出勤を条件としているのは、労働者の勤怠の状況を勘案して、特に出勤率の低い者を除外する立法趣旨であることから、全労働日の取扱いについては、次のとおりとする。
1 年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る。
したがって、所定の休日に労働させた場合には、その日は、全労働日に含まれないものである。
2 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は、3に該当する場合を除き、出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとする。
例えば、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように、労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日が考えられる。
3 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても、次に掲げる日のように、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは、全労働日に含まれないものとする。
(一) 不可抗力による休業日
(二) 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日
(三) 正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
つまり新型コロナウイルス感染症にかかる会社命令による休業に関しては、全労働日に含めいないということになります。出勤でも欠勤でもなく、そもそも労働日ではないということですね。
まだまだ予断を許さない新型コロナウイルス感染症。随時変更される情報を正確に確認ししながら、適正な対応を進めていきましょう。
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